運動とエネルギー供給機構
1.運動種目とエネルギー供給機構 |
(1) 筋肉が収縮する直接のエネルギー源は、ATP(アデノシン3リン酸)である。 |
ATPからリン酸(P)が分離するときに放出されるエネルギーにより、筋は収縮する。 |
(2) 運動の種類(負荷の程度)によって、筋肉へのATPの供給方法が異なる。 |
(3) 負荷の程度とは、最大酸素摂取量VO2max(リットル/分)に対する酸素消費量(%)のことでである。 |
(なお、VO2max の値は、個人の運動能力によって異なる。当然、鍛錬者のほうが大きい。) |
(4) また、最大酸素摂取量に対する負荷割合と心拍数には相関がある。 下表は目安である。 |
運動負荷: VO2max に対する割合(%) |
30 | 50 | 60 | 80 |
運動時の心拍数: HRmax に対する割合(%) |
58 | 70 | 77 | 88 |
最大心拍数の目安は、HRmax=215−年齢である。 |
以上の内容を具体的に書くと以下の表のようになる。 |
運動負荷 | 最大酸素摂取量に対する割合(%) | |||||
30〜50 | 60 | 75 | 90 | 120 | ||
主なエネルギー供給機構 | 酸化系 | 75%では酸化系 90%では解糖系 |
ATP−CP系 8秒以降は解糖系 |
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運動種目の例 | ウォーキング ジョギング エアロビクス |
マラソン | 400〜10,000m走 サッカー ラグビー |
100m走 砲丸投げ 走り高跳び |
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燃料 | クレアチンリン酸 |
1 | 3 | 3 | 3 | 5 |
筋グリコーゲン |
1 | 5 | 4 | 3 | 2 | |
血中グルコースと 肝臓グリコーゲン |
2 | 4 | 2 | 2 | 1 | |
血中の脂肪酸と 脂肪組織の中性脂肪 |
2 | 2 | 1 | 1 | 1 |
5:非常に激しく消耗 4:激しく消耗 3:ほどほどに消耗 2:やや消耗 1:消耗しない |
2.各エネルギー供給機構の継続時間 |
一流の運動選手が、最大努力で全身運動を行ったとき、各エネルギー供給機構の発生エネルギーを |
グラフ化すると次のようになる。 |
各エネルギー供給方法の寄与率を%表示した表 |
ATP−CP系 | 解糖系 | 酸化系 | |
3秒以内 | 100% | 0% | 0% |
10秒経過後 | 54% | 44% | 2% |
60秒経過後 | 0% | 90%以上 | 残り |
30分以降 | 0% | 残り | 90%以上 |
これらのグラフや表は、各エネルギー供給機構の ”寿命” を表している。 |
なお、エネルギー供給速度は以下の通りであり、運動の特性とマッチしていることがわかる。 |
ATP−CP系(13Kcal/Kg/sec) > 解糖系(7Kcal/Kg/sec) > 酸化系(3.6Kcal/Kg/sec) |