「…本当は、もう逢えないと思ってました」 エルによって作り出されていた長い沈黙、それが作り出したエル自身によって破られる。 「だって、お義母さんの話しからすると、殆どの白龍族がもういないって言ってたから、もう、お母さんにも逢えることがないって、そう思ってました」 俯きつつ、やっとの思いで紡ぎ出すように話すエル。 一言発するたびに瞳は潤み、今にも雫が一筋こぼれそうになっていた。 「でも…良かった…本当に、お母さんが生きてて」 「エル…」
白龍族として… 3 久遠の絆 「え?」 突然のエルの問いかけに、その真意が気付けずに驚くエルの母。 「だって、今の私に、白龍族でいる資格なんて無いのに…」 そう呟いたエルは少しだけつらそうだった。 間違い無く、エルは自分で攻撃していることを、自分で他のものを傷つけたことを言っていた。 「どうして、そう思うの?」 母親が、エルに問いかける。 だが、エルは言い辛そうに俯いたまま何も話そうとはしない。 「どうして、そう思うの?」 母親がもう一度エルに問いかける。 まるで、母親が幼い子供に問い掛けるように、優しく。 それで少し安心したのか、エルは何かを決心したように顔を上げた。 「…私は、今日、初めて、自分の為だけに、…他の人を傷つけるために、魔法を使いました」 あえて母親から瞳を逸らさずに語るエル。 「そのこと自体は後悔していません、…でも、白龍族としては、失格です」 そして再び沈黙がエル達を包む。 そして、その沈黙を破ったのは、母のほうだった。 「そう…大変だったのね」 「…え?」 エルは怒られるか呆れられるかするかと思っていたが、母親の反応は正反対といっても良かった。 思いもよらぬ慰めに、きょとんとするエル。 「だって、エル」 母のその瞳は、その言葉が本心を紡ぎ出していることを語っていた。 「辛かったでしょう? エルは…相手の心が、少しだけでも読めてしまうから」 「…ッ!」 そう、はっきりとは感じることは出来なかったが、相手の今の感情がエルに流れこんでくることが良くあった。 それが、強ければ強いほど、辛ければ辛いほど…。 「それでも、攻撃せざるを得ない状況だった、だからエルは、攻撃をした、…自分が傷つくと分かっていても、…違う?」 「で、でも…」 例えそうだとしても、他人を傷つけたと言う事実は変わらない。 と言おうとしたエルの口を母親がふさぐ。 「それなら、白龍族としては失格じゃない。 むしろ、誇らしげにしてても良いのよ」 優しく、何処までも優しく語る母親。 「だってそれは、自分の為だけじゃない、私は、そう思うわ、…他の誰もが、そうじゃないって言ってもね」 「…なん…で?」 エルはようやく、その一言をつむぎ出す。 「エル…これでもね、私はエルの『お母さん』なのよ」 「…お母…さんッ!!」 その母親の台詞を聞いて、エルは我慢が出来なくなった。 思わず母親の胸に顔を擦り付ける。 「ぐすっ…私、本当はお母さんに見捨てられたくなかった、でも、そうなっても仕方がないって思ってた!」 そして、今まで我慢していた本音を、語るエル。 「だから、我慢してた…でも、良かったよぉ…うぅ…」 そして、そのまま胸の中で泣き始めるエル。 それを優しく包むように抱きしめる母親。 離れ離れになっていてもこの二人は親子だ、そう実感させる光景だった。
だが、その沈黙は決して悪いものではなかった。 「それ〜で〜私は自然に無視され〜て〜一人ぼっち〜♪」 …だが、その沈黙も、悪くないムードも突然響いてきた妙な音程の歌声で木っ端微塵に破壊された。 思わぬ事態に沈黙を余儀なくされてしまった親子二人。 「だってだって〜! エルちゃんもティンクちゃんも私をふつ〜に無視してくれるんだもん!」 どうやら、そのムードで置いてきぼりにされたエルの義母がなんとなく寂しくなって歌ったようだ。 「…ファティア、やっぱり変わらないのね…」 と、エルの母親…ティンクがどこか諦めたように呟く。 「…そう言えば、まだ聞いてないことがあるんですが…」 とりあえずティンクの胸から離れて、少し恥ずかしげにしながらエルがそう呟いた。 「…唐突ねぇ…」 「ファティアの唐突さに比べたらそんなに変わらないと思うわよ」 呟くファティアとそれに突っ込みを居れるティンク。 なんとなく、ファティアがボケでティンクが突っ込みに見えてしまう…。 「あ、あの…」 そう言うやり取りになれてないエルは当然困惑する。 「まあ、答えられる範囲内で良いなら答えるわよ」 と、ファティア。 「ええっと…それじゃ、まず一つ目、お母さんとお義母さんって、どう言う関係なんですか?」 「お母さんとお義母さん…ややっこしいわねぇ、私はファティア女王陛下で良いわよ」 「何でそこで女王陛下が付くの…」 「だって本当だもん♪ それが嫌なら総帥でも…」 「何、総帥って…」 脱力をしながらそう呟くティンク、そしてエルは…。 「分かりました、ファティア総帥」 「「…」」 二人は、天然なのかし返しなのかいまいち掴めないでいた。 「どうしました? ファティア総帥」 「…ごめん、私が悪かったわ…」 「分かれば良いんです」 「…」 なんとなく、なんとなくではあるが、ティンクはちょっと自分の娘のこれからが心配になってしまうのであった。 因みに、その原因がファティアにあることは言うまでもない。 to be continued…。
後書き 今回は…なんとなくプログラムを打つ気力が無くて、小説を打ってたら1日で完成してしまった…(汗 と言うわけでReason'sFang31話お届けしました♪ 次回からは、急展開! …になると良いなァ…って思ってます(マテ …いや、しばらく掛かると思いますけど…(どっちだ
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