「うーん…」

 寝返りを打って、そこがいつものふかふかなお布団ではないと言う事がわかり、目を覚ますエル。

 周囲は、まるで雲の中にいるように白い霧で包まれていた。

「あれ? ここは…」

 見なれない周りの風景に驚くエル。

 よくよく感じると、不思議な浮遊感がある。

「あれ? 何でこんな所にいるんでしょうか?」

 確か私の記憶が確かなら…そうそう、『望郷の社』の奥の部屋で…。

 ………………え? ってことはまさか私…。

 死んじゃって…るん、ですか!?

 はうぅ〜〜〜!!?? ええ!? 本当ですかぁ!?

「いえ、死んでませんよ」

 ええっ!? という事はリムさん達、置いてきぼりですか!?

 何者かが語りかけてきたが、思考が暴走しているためその声は耳に入らなかった。

「いえ、だから…」

 やっぱりあの時、戦う事を決心したからですか!? やっぱり…。

 何者かが語りかけてくるのにも全く気づかず、思考をさらに暴走しているエルだった。

「エルちゃん!!」

「はぅぅ!?」

 突然耳を通さずに声が心の中で響き、暴走していたエルはビクッっと固まり、そのままパタリ…と倒れたのだった。

 その表情には、きゅ〜〜〜と言う擬音が似合っていた。

「あら? やりすぎちゃったかしら…」

 …その通りです。

Reason's Fang29話
白龍族として… 1 エルの夢




「うーん」

 寝返りを打って、そこがいつものふかふかなお布団ではないと言う事がわかり、目を覚ますエル。

 周囲は、まるで雲の中にいるように白い霧で包まれていた。

「あれ? ここは…」

 見なれない周りの風景に驚くエル。

 よくよく感じると、不思議な浮遊感がある。

「あれ? 何でこんな所にいるんでしょうか?」

 確か私の記憶が確かなら…そうそう、『望郷の社』の奥の部屋で…。

「…また同じ事を繰り返すつもり?」

「…え?」

 奥に入ろうとしていた思考が、突然響いた呆れているような一言によって引き戻される。

 …え、この声は…。

「お義母さん!?」

「そうよ」

 間違い無かった、その声は明らかにエルの義母の声だった。

「ええっ!? …まさか、お義母さんも死んで…」

「はいストップ。 また無限ループになりそうだから先に言っておくけど、私もエルちゃんも死んでないわよ」

「…え? そうなんですか?」

 …恐らくこの言葉を訊いていなかったら再び無限ループに陥っていたような気がする。

 はぁっ…と深い溜め息をつく義母だった。

 因みにどうでも良い事ではあるが、先ほどの思考暴走、気絶を2回、思考暴走しかけで義母のストップ、義母死んだと勘違いし暴走、気絶を2回繰り返していた。

「絶対に、ケティの悪いところが影響してるわね…」

 しみじみ呟く義母であった。

 だが、いくら反応しないからといって気絶するほどの怪音波を放つ義母もどうかと思うが…。

「え? ケティお義姉さんが何か?」

「…いえ、何でも無いわ」

「…???」

 そう言ってから再び深い溜め息を吐いた母と、全然意味がわからないエルであった。




「…で、お義母さん、ここは…?」

 とりあえず完全に落ち着いたエルが問う。

「ここは、貴女の夢の中よ、エル」

「…で、何でお義母さんは私の夢の中を覗いているんですか?」

「うーん、ちょっと興味があったから…」

「違うでしょ?」

「う〜、即答…」

「はぁ…すぐに子供化しないで下さい」

「違うよぉ、エルちゃんが大人びすぎてるだけよ」

「絶対違うと思います」

「うぅ、しばらく合わないうちに毒舌になったわねぇ…一体誰に似たのかしら…」

「少なくともお義母さんではないと思います」

「うぅ、はっきり言うわね…」

 落ち込んだかのような口調で語る義母だったが、落ち込んでいる声ではなかった。

「…で、改めて訊きます、何故私の夢を覗いているんですか?」

「…あのね、エルちゃん、落ち着いて聞いてね」

 その声は、先ほどまでの子供っぽい雰囲気から、真剣な、言うなれば本来の雰囲気に戻っているような感じだった。

「はい、分かりました」

「エルちゃんにね、逢わせたい人がいるの」

「逢わせたい人?」

「そう、夢の中で悪いんだけど…現実にはちょっと逢わせれないから」

「はい…」

 誰なんでしょうか? 私に逢わせたい人って…。

「あのね、その人はね…」

 エルの心の声に答えるように言いかけ…止める。

 まるで自分の心を落ち着けるかのように。

「その、人は?」

「エルちゃん、貴女の…本当のお母さんなのよ」




 しばらく、時間が止まったかのように静かだった。

「私の…お母さん?」

 その時を動かしたのは、やはりエルだった。

「そう、貴女の、本当のお母さん…」

 実の話、エルは実の母の本当の姿を知らない。

 エルが気付いた時には、今の義母がエルを育てていた。

 義母にも自分の母がどうしているのか訊いたことがあったが、「その時が来たら話すわ」としか言ってもらえなかったのだ。

「一つ、訊いて良いですか?」

「…何?」

 エルには、義母が何を聞こうとしているのかが分かっているような気がした。

「何故、私の母は…貴女に、私を託したんですか?」

「…そうね、もう話しても良い頃ね、貴女が、何で私のところに引き取られたか…」

to be continued…。




 後書き
 と言うわけでReason'sFang29話お届けしました〜♪
 いや、何と言うか…30話越えますね…(汗 …長すぎ?
 もう佳境に入ってるとは思いますけど…。

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