「ふわっはっはっはっ…」 勝ち誇ったかのような博士の笑いが周囲に響いた。 「別にクリエルでなくても良いのだよ…その適性を持った遺伝子を持った人形でもな!」 「ふは…ふはははは! 良くやったぞ!」 それまで固まっていた陛下と呼ばれた男も、ようやく笑い出し、乗り込んで来た女性の方を振り向く。 「愚かな事を考えたものだ、我に歯向かおう等と」 だが、女性の方は何か覚悟を決めたような表情をしていた。 「…なら、これは使いたくなかったんですが…」 そう呟くと、何か小型の機械を懐から取り出した。 「貴方達には…ここで死んでもらいます!」 彼女がそう叫ぶと同時にその小型の機械が光り出した、そして周囲が爆音と光に包まれる。 そして急に周囲が暗転した。
真実 6 「…」 「…リム君?」 画像が終わっても何の反応も示さず、画像が流れていたところを見つめるリムを不審に思ってか、少女が声を掛ける。 「…!!」 リムは怒っていた、それも、今まで見てきた記憶の中で、一番の怒りようであった。 手は血を通わせなくなるほどきつく握られ、細かく震えていた。 「…あいつ…」 リムが怒るのも当然かもしれない。 あの男とは根本的な考え方が違った。 リムはどちらかと言うと周りに迷惑をかけないように、さらに言えば自分で全てを背負ってしまうような性格だ。 それに対しあの男は周囲に被害を出そうとそう言うことは考えないのだ。 そして、その事はリムには信じられないことでもあった。 「ゆるさない、絶対に!」 あいつが何の為に『理の牙』を求めるのかは知らない、だが、そんな事は関係無い。 ウィルと、『理の牙』をあいつから取り返す、そうリムは心に誓った。 と、その瞬間、暗転していた画面が急に光を取り戻した。 その画面に映った風景、それはリムにとって懐かしい光景だった。 「…ここは、俺の家!?」 そこはリムの育ったあの家であった、あれから何があったのかは知らないが、どうやら自分一人のようだった。 「多分、あの爆発の影響でここの近くに飛んできたんだと思うけど…」 そう呟く少女。 「これ以降の記憶は特に影響はなさそうだし、もう良いんじゃないか?」 「…そうね」 彼女がそう言った瞬間、目の前が暗転した。
それがリムの正直な感想だった。 「結局、何が原因で家に飛んだのか、良く分からなかったし、俺が何者なのかも良く分からなかった」 「…なんでそんなに冷静なの〜?」 少女が呆れたようにそう突っ込む。 「私にはあれだけでも十分に衝撃的かつ重大な事だと思うんだけど…」 「…ま、何であれ俺は俺だ。 それだけは変わらない事実だからな」 そうリムははっきりと言った。 「絶対その意見変だよ…心配して損した」 前半ははっきりと、後半は小声でボソッと言う少女だった。
「そうか、それじゃあな」 「う〜…一緒の世界歩んできた友に対する愛が無いよこの人…」 「あのなぁ…俺の記憶を覗き見てただけだろ、それにいつ友になった」 リムは頭痛を感じていた。 「本当にこの人愛が足りないよ〜」 「足りなくて結構」 「う〜…寝てる時あんなに可愛かったのに…」 「…おい」 さらっと爆弾発言をする少女、それに反応するリム。 「ん? どうしたの?」 「今、なんて言ってくれたかな? 君は…」 笑いながらそう訊くリム、でも、目が笑っていません。 「そ、そんな怖い顔しなくても…」 「え、この笑顔のどこが怖いって?」 全部です。 それにこめかみに青筋浮いてそう言う風にすごまれても説得力ありません。 「ひ、ひええぇぇ…」 「そんな事言うのは…この口か? この口かぁ!?」 叫びながら少女の両頬を引っ張るリム。 「痛い、痛いよぉ!」 「まだグランフレイ10連発で無かっただけ有りがたいと思え!」 「本当にこの人愛が足りてないよ〜!」 …同感、かも知れない。
自分の両頬を撫でながらそう愚痴る少女。 「まさに林檎のようなほっぺただな」 「誰の所為よ! 誰の!」 「自業自得だ、反省しろ」 「うぅ、もっと全てに愛を、だよ」 「…もう一度同じ目にあいたいらしいな」 「いえ、結構です」 少女はそうはっきりと断ると、杖を構えなおした。 「これ以上いると危険だし、私はそろそろ行くわね」 「危険かどうかはお前の行動次第だとは思うが?」 「これでも私はうら若き少女なんだから♪」 「…そう言う奴に限って不老不死とかで1000年生きてたりするもんだぞ」 呆れたように呟くリム。 「この世には不老はあっても、不死は無いんだから、1000年も生きれるわけ無いじゃないの」 「つまりお前も、外見と実年齢が一致してないって訳だ」 「む、何で断定?」 「人を小ばかにした態度はまさにそうだろ」 …その割にはなんだか読めない奴になりきれてないという感覚があるが。 「そ、そんなことあるわけ無いでしょ〜」 やっぱりか。 あまりにもどもっているので確信してしまった。 コイツは不老のタイプの割りに長い人生で精神が成長してない自爆少女だと。 「だれが精神年齢10歳よ!!」 「そこまでひどいことは言ってないっての」 「はうっ!」 「そういう言い方をするということは自覚してるんだな」 「はうっ、はうっ!」 「そして更に自分が不老だという事を認めてる」 「はう〜〜〜〜〜!!!!」 リムの一言に天を仰ぎ、その後ずーんと暗いオーラを纏ったまま沈み、そのままいじける少女。 「…なんだかなぁ…」 でもそれはリムにとっては自爆を重ねただけのような気がするが。 …しかし、はう〜と叫ばれると、やっぱりエルを思い出す。 …性格がまさに対極の場所にいるが。 「そりゃそうよ、私はエルの姉なんだから?」 「だから心を読む…って、今なんて「はう〜〜〜〜〜〜!!??」…うるさい!」 とりあえず暴走気味な自称エルの姉にゲンコツを一発お見舞いして黙らせるリム。 「痛い…それに言っちゃったよ…お母さんに『黙ってなさい』って言われてたのに…」 とりあえず嘘をついているようには見えない…というかこれで嘘だったらこいつが怖いぞ。 「嘘じゃないって…いや、やっぱり嘘で」 「…」 何と言うか…疲れた、一気に。
「そんな判定のされ方、嫌」 「そう思うんならもうちょっと暴走を押さえろ」 「やっぱりこの人愛が足りてないよ、らぶあんどぴーす、だよ?」 「…付いていけん」 というか、危険だからもう去るのではなかったのだろうか? 「あ、そうだったね…後、最後にちょっと」 「?」 「エルとは『義理』の姉妹だから、私は白龍族じゃ無いわよ」 「そうなのか」 というか白龍族を義理の妹として持っているってのは不思議な話しだな。 「後、一応念の為に言っておくけど、私は不老でもないわよ、成長は遅いけど」 「へいへい」 「…ねえ、私の種族は知りたくないの?」 「別に、微塵も知りたいとは思わない」 「え〜! ほんのちょっとでも良いから思ってよ〜〜!!」 「…と言うか、母親にだめって言われてるんじゃないのか?」 「…うっ」 …やっぱりか。 リムは頭痛を気合で押さえながら続けた。 「と言うわけだ、さっさと去ね」 「うぅ、分かったわよ、絶対にまた来るから!!」 「…もう、来なくて良い」 リムがそう呟いた瞬間に彼女の姿が掻き消えた。 それと同時にその場に膝を付くリム。 「こんなの、無事なわけ、無いじゃないか…」 誰に言うわけでもなく、呟くリム。 その表情は、今までの会話からでは信じられないほど衰弱したものだった。 だが、こんな表情を見せれるわけが無い。 その一心で今まで隠していたのだった。 「でも、負けるわけには、行かない…!」 そう呟きながら、地面に倒れこむリム。 その息は、安息を求めるそれだった…。 to be continued…。
後書き はい、Reason'sFang28話お届けしました♪ なんだか、今までの反動で後半が…(汗 まあ、気にしないでください(マテ しばらく重い内容(多分 の反動ですから(ぉ さて、次話は今度はエルの夢の中と言う事で…。 またあの少女が出てくるのかな?(訊くな
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