リムの目の前に広がった光景、それはつい先ほどまで見ていたような光景だった。 「これは…望郷の社!?」 それも、一番奥の、リム達が先ほどまで戦っていた場所に酷似している。 だが、どこか微妙に違った。 …そう、例えて言うなら暖かさ、人の活気に満ちているのと満ちていないのと。 そして、その広間に白衣らしきものを着た多くの男女が部屋の隅の機械を見て、時折何かを報告しているようだった。 「でも、一体なんで…」 「…これは、紛れも無く君の記憶だよ、本当に、誕生した頃の赤ん坊としての」
真実 4 「…! これは、さっきの!?」 それは、先ほどまで闘っていた男に他ならなかった。 違いがあるとすれば、先ほどの男の白衣に比べ、こちらはかなり白い白衣を纏っていると言うことか。 「発育状況は82.3%、外気にさらしても問題ありません」 「アドガイドの遺伝子を持った子も完成したか…」 「ふむ…この子が『理の牙』の適性を持っているといいのだが…」 「…これで、10人目ですからね…」 「これ以上失敗すると、上から中止命令が来かねぬからな」 「はい」 そう話しをして夢の中のリムから離れて何やら話しをしている。 「今…のは?」 「いや、私に聞かれても…これは君の記憶なんだから。 …ねえ、これ以前の記憶、本当に見るの?」 「…」 なんだか体の奥から寒気が走り、体中を冷や汗が流れる。 もしかしたらこれは本能の警告なのかもしれない。 これ以上見るな、という。 「…ああ、ここまで来て真実を知れないのは悔しいからな」 だが、リムは自分を奮い立たせながらそういった。 逃げない、その思いだけがリムを支えていた。 その表情は、少女から見ても無理をしてると分かるものだった。 「分かったわ、…次、行くわよ」
これで生まれてから2年程の記憶を遡った。 どの記憶も、いい意味でも、悪い意味でも、普通ではなかった。 大事にされていたのは分かるが、それは父性や母性ではなく、興味があるからといった感じだ。 夢の中のリムは、かなり閉鎖された環境で育てられていたらしく、外部の情報は記憶からは全く入ってこなかった。 また、リムと同様の環境で育てられたものもいるらしく、その部屋にはリム一人ではなかった。 だが、リムを追い詰めているもの、それは、そのときに付けられた自分の名前がクリエルであるということと、先ほどの男が自分の本当の親であるという事だった。 「大丈夫…?」 リムの表情も青ざめたを通り越して土気色と化しているような気がした。 夢の中なのに変なもんだな、とどこか遠くで考えながらリムは答えた。 「…ああ、大丈夫だ…次」 「…ええ」 彼女が答えた瞬間、ブラックアウトしていた視界が高速で映像が流れるようなものに変わった。 「…ん?」 「どうした?」 「いえ、ちょっと気になることがあって…」 「気になる事?」 「ええ、ちょっとここで止めるわね」 と彼女が言った瞬間、流れるような画像が急にひとつの映像と化した。 同時に音も感じれるようになった 「第23ブロックから連絡が途絶えました!! ここに奴等が侵入するのも時間の問題です!」 「なんとしても、この適正遺伝子を渡してはならん!」 なにやら、えらそうな顎鬚を蓄えた妙な服を着た男が似たような服を着た男に命令しているようだ。 ちなみに、今までの記憶で見たことが無かった。 今いるのはいつもの部屋で、そこに変な服を着た人が4人ほど、そして白衣を着た人たちが5・6人いるようだ。 「くそ! なんでこの場所が分かったんだ!?」 「おそらくそれは…」 男の呟きに白衣を着た男が語りかける 「おそらく…なんだ? 何かあてがあるのか?」 リーダー格の男が白衣の男に詰め寄った瞬間、男の首がナイフで斬られた! 「私達が密告したからですよ!」 「あんな非人道的な実験、もう許せません!!」 そう白衣を着た女性が叫ぶと同時に他の男達も取り押さえられていた。 「ファニィ! キュルス! 早くゲートを!」 「分かった!」 先ほどナイフで切りかかった男と叫んだ女性が部屋から出て行った。 「…これで、この子達も…」 だが、その数分後、先ほどの男が身体に切り傷を負って転がり込んできた。 「くそ…はめられた…奴等、これを利用して…」 「キュルス! キュルス!!」 男はそれを言って息絶えた。 それと同時にさらに見慣れない服を着た男達が入ってきた。 「先導ご苦労、君達はもう用済みだ」 そしてその後ろから…リムの父が入ってきた。 父は馬鹿にしたような笑いを浮かべながら白衣の男達に向かって銃を撃った。 「さて、これで秘密を知るものはいなくなったわけだ…」 男は満足そうに呟くと、部屋を後にしていった…。
「多分、秘密を独り占めにしようとしたか…上からの命令か、そんな所でしょうね」 「…なんなんだよ、一体…」 リムはそう呟かずにはいられなかった。 「リム君、ちょっと休みましょう? 顔色悪いわよ」 「いや、これくらい…」 と言おうとした瞬間、体が動かなくなり、強制的に座らされた。 「だめ、ちゃんと休んで」 「…強制で休めるか?」 「いいから」 少女がそういった瞬間、リムは自然とまぶたが落ちていった。 夢の中で寝るって変な話だな…と思いながらリムは気を失っていった。 to be continued…。
後書き Reason'sFang26話、久しぶりにお届けしました。 ってか、なんだか時間が掛かりまくったような気が…。 うーん、本当にいつになったら自由な時間が増えるんでしょうか…
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