「とうつき〜♪」 リムはふと思った。 何故この声はこんなに明るくて、散歩気分なのだろうか? …いや、これは明るいを通り越して…。 「通り越して、何?」 あ、そうか、心の声が聞こえるんだった、用心しないとなぁ…。 「ねえ、何?」 というか移動した感じがしないんだが…。 「無視〜、無視〜…」 あ、いじけた。
真実 3 悪かったな、ひどくて。 とリムは呆れたように心の中で呟いた。 「って、そんな事は良いんだよ」 良いのか。 「良いの! で、今から記憶を見るよ? 良いんだよね」 …やっぱりお前は見るのをやめてくれないか? 「ええ〜なんで〜!」 いや、純粋に憑かれそうだから。 「どう言う意味! しかも何で微妙にニュアンスが違うの!?」 …良く分かるな。 リムは正直に言って呆れた。 何でこいつはこんなにハイテンションなのだろうか? そう思わずにはいられなかった。 「だって、暗かったらそんじゃない?」 …頼むからいちいち突っ込まないでくれ。 分かったから、一緒に見て良いから。 「は〜い、それじゃ行くよ〜♪」 …はぁ。
と言った瞬間に周りが明るくなった…いや、体が全ての機能を取り戻したと言ったほうが正しい。 浮遊感も落下感もない。 それまで見えなかったものが見え、体も自由に動かせ、そして…。 「しゃべれる…な」 「そう?」 先ほどと違い耳に声が響く、リムの呟きに反応したのは…。 見た目15くらいの少女だった。 黒いとんがり帽子に黒いマント、黒いローブといういでたち、そしてこうもりのような羽根を持った。 「…悪魔?」 リムの第一印象がそれだった。 「本当に、この人何気にひどいよ〜、それにコレ明らかに飾りだって分かるじゃない〜」 うるる〜と言った感じで袖に顔を押し付ける少女。 そう、一瞬本物かと思ったが良く見ると模造品だと分かる。 「まあ、気にするな、とても変だったからからかっただけだ」 「あ、よかった…ってあんまり変わらないじゃない!」 一度安心してすぐに叫ぶ少女。 表情をころころ変えるな…。 「で、これは…」 リムたちの目の前にいたのは…、少し幼いリム。 リムたちがいる方向へ向かっているようだ、旅の支度をして。 「無視〜無視〜…」 どうもこの少女はすぐにいじける体質らしい。 「体質じゃないって、それ。 それにその原因は君でしょ?」 「心を読むなっての…それより」 「ええ、これは多分今から5年前の記憶の世界ね」 「ということは…」 あの事件の後か…ここに手がかりがあるとは思えないな。 「もうちょっと昔の記憶を見る?」 「ああ、そうしてくれ…ただ、最低1年は飛ばしてくれ」 「?」 自分の記憶の中とは言え、あのシーンはもう2度と見たくない。 「あのシーンって?」 「…だから心を読むな」 「はい、分かりました〜」 といって手を上に持っていき…。 「〆‥θ/凵辯煤縺゚!!」 …自分が理解できるはずの言葉であるにもかかわらず、頭が言葉を翻訳し切れなかった。 そしてその少女はなにやらポーズをとっている。 「…で? 切り替わらないのか?」 「いえ、なんとなくやってみたかっただけですから…」 リムはその言葉を聴いた瞬間、めまいと頭痛がしたような気がした。 …本当に、こんなのに任せて大丈夫なのだろうか…。 と思うリムであった。
「ああ…」 確かに記憶にさわりすらしない事もあった、だが、特にどうと言った事もない、神の啓示を受けたわけでもなければ、魔王の祝福を受けたわけでもない。 「きゃ〜♪ リムさん凄いですぅ〜!!」 …いや、こいつに掛かれば俺のどんな行動も凄いらしい。 ただ単に楽しんでいるだけのような気もするが。 そして何気なく台詞がエルと被る様な気がした。 …いや、タイプは違うと思うが。 「だってだって、あの高さから無事に飛び降りたんですよ!?」 「…その後骨折してれば世話ないだろ」 ってかだから心を読むなよ、とリムは思いつつ呟いた。 因みにその時どうしてそう言う状況になったかというと、その時期に村で度胸試しのようなものが流行ったのだが、その所為で村のとある樹の上に登った女の子が降りられなくなってしまうと言う事態が発生した。 しかもその女の子が乗った枝は、大人が乗ったら支えきれない位の太さなので、仕方がなくリムが助けに良くことになったのだが、リムが少女の乗っている枝に乗った時点で枝がかなりやばい状態であり、少女を抱きかかえると同時に枝が折れてしまったのだ。 リムは少女を抱きかかえたまま咄嗟に他の枝に飛び降り、衝撃を和らげようとしてその枝も折れかけ、さらに飛び降りを繰り返して無事に着地したのだった。 少女に怪我はなく、リム自身にも異常はなさそうだったが、家に帰って緊張が解けた瞬間、足に激痛が走ったのだ。 「でも! それでも凄いですよ〜!」 「…てか、どうでもいいだろ…」 疲れたように、いや、思いっきり疲れて呟くリム。 「この人、ノリが悪いです」 「自分の過去でノリノリになってどうするんだよ」 「分かりました、それじゃもう一年程過去の記憶にさかのぼりますね〜」
リムは呟く。 ちなみに今は13年程前の記憶だったらしい。 「そうですねぇ…」 もういちいち騒ぐのをやめた少女、というか、あまりに騒ぎすぎたためリムから鉄拳を貰ったのだが。 「それじゃもう一年…」 「いや、待った」 もう一年前の記憶を見ようとする少女を止めるリム。 「はぇ? どうしてですか?」 「できれば一気に生まれでた頃の記憶に戻せないか? このままじゃきりが無いかもしれない」 「でも、その飛ばした時の間にヒントがあるかもしれませんよ?」 「いや、そうなったらまた記憶をさかのぼるだけだ」 「…はい、分かりました」
その目の前に広がっていた光景、それは全く見覚えの無いものだった。 にごった水の中に四方を囲まれているような、そんな感じだ。 時々、外から話し声が聞こえるのが分かる。 「えと、これって、なんでしょうね?」 傍にいる少女も同じように呟く、まるで…。 「何かに漬けられてるみたいだな…」 呟いた自分の言葉に寒気が走る。 「これって、俺の記憶なんだよな?」 「ええ、だとするとこれは…羊水?」 それにしては何かがおかしい気がする。 そして、その瞬間、光が走る…。 「何、なんだよ、これは…!!」 to be continued…。
後書き Reason'sFang25話お届けしました〜♪ …いいところで区切り、これ、小説の常識(絶対に違うw まあそんな冗談はともかく、次回は…もう予測できている方もいるかもしれませんが(汗 リムの夢の山場を迎えます、頑張って執筆してみます…。
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