Reason's Fang24話
真実 2




「大いなる風の刃よ! 今我が牙に宿りて敵を討ち滅ぼす力となれ!」

「シャープネス!」

 リムが詠唱を終えると同時に双剣が緑の輝きに包まれる! 輝きが定着したのを確認したリムは敵に襲い掛かる!

 と、敵のオーラの一部が溢れだし、球体となって敵の周囲を浮かぶ! そしてその球体が光線を発射した!

「うわ!」

 飛び退き、レーザーの攻撃をかわして、敵のほうを見る。

 球体の数は5個、どうするか…。

「光よ、我が矢に宿りて敵を討て!」

「セラフィックライト!」

 と、後ろの方からタロンの詠唱が聞こえると同時に後ろから球体に向かって複数の光の矢が飛ぶ!

 球体も回避行動をとるが、それを先読みするかのように矢が球体の中心部分を貫く!

 そして、数本の矢が男に襲いかかる!

「ハァッ!!」

 男が気合と共に掌を突き出す! 掌から放たれた衝撃波が光の矢を打ち砕く!

 と、同時にリムが肉薄する!

「炎龍牙!」

 緑色の輝きを纏った双剣に、さらに炎が宿る! そしてその双剣を振り下ろす!

 男は白い剣でガードする!

 ガキィィ! と音を立てて剣が重なる!

「龍吼!!」

 双剣に篭められた魔力を解放する! だが、白い剣を砕くことは出来ずにリムは衝撃で後ろに飛ぶ!

「くっ…」

 何とか立ちあがるリム、同時にタロンが詠唱を始める!

「古の契約に従い、我が敵に裁きを与えよ!」

「ホーリーブラスト!!」

 詠唱が終了すると同時に男の回りに無数の白い光の玉が出現する! そして玉の一つ一つが他の玉と光の線で結ばれ…!

 チュ…ドオオォォン!! と音を立てて爆発する!

「どうだ?」

 だが、中の男は無傷だった。

「障壁か、得意だな」

 ふと、リムは周囲を見渡す。

 エルは倒れたまま起きあがってこない、下手をしたら命に関わるかもしれない。

 アルメリアも何故か立つ事もできないようだ、座りこんだまま闘いを見ている。

 そしてウィル、さっきから動いていないようだ。

「どうにかしないとな…」




 改めてウェルチとReason'sFangを構えなおしてそう呟くリム。

「あいつの障壁さえ無効化できれば…」

 さて、それにはどうしたものか、あの防壁はさっき攻撃した時には出現していなかった。

 という事は物理を無効化できないと言う事。

 つまり、障壁の内側に魔法を発動させるか、物理で攻めるか…。

 と、考えているうちに男の放っていた黒いオーラが男を包み込む!

「な…?」

 そして、オーラが霧散すると敵も消えていた。

「逃げた、のか?」

「ふぇふぇふぇ…」

 リムの声に反応するかのように部屋のどこからともな男の声が響いてくる。

「もう覚醒した頃じゃろう…」

 と、声が終わると同時に背中に予期せぬ衝撃が走る!

「ぐ…ぁ!」

 前のめりに倒れ、すぐに起きあがって咄嗟に後ろに構える!

 リムに攻撃を加えていたのは…。

「ウ、ウィル…?」

 間違えなかった。 無表情で、こちらに向かって鞭を構えていた。

「なん、で…」

「ふぇふぇふぇ…間違いなかったようじゃの…」

 男の満足そうな声が響く。

「お前! 何をした!」

「何をした、じゃと? 元に戻しただけじゃよ!」

「何…?」

 元に、戻した…? リムはその言葉の意味が理解できなかった。

「もともとそいつには人格などない、わしがかりそめの人格を与えていただけなのじゃ」

「…」

「じゃから今のそいつには。 クリエル、お前の片割れは人間などじゃないのじゃよ」

 クリエル、先ほどリムに向かって放たれた名前、今回もリムに向かって放たれていた。

「誰だよ、クリエルって、それに、片割れって何だよ?」

「お主は、本当に何も覚えていない…いや、知らぬと言ったほうが正しいか?」

 と、男が楽しむように呟いた。

「知るか! 俺はリムウェル=キュリアスだ! それ以外の誰でもない!」

「ふぇふぇふぇ、まあ良いじゃろう、冷静になれば全てが分かるじゃろう」

 と、だんだん男の声が小さくなって行く。

「もちろん、こいつも…な」

 と、ウィルの姿が掻き消えた!

「ウィル!」

「まあ冷静に考えてみるがいい、お前は本当は何物なのか…をな」

 そう言ったきり声はしなくなった。

「…ウィル」

 リムは脱力した、と、同時に急に気が遠くなって行くのを感じていた。




リムが気がついて第一に感じた感覚、それはふわふわ浮いているような、深くに沈むような、そんな相反した感覚だった。

 ここは…。 そう呟こうとして声が出ていない事に気付く。

「目が、覚めたかい?」

 そして、誰かに呼びかけられるが、目を凝らしても何も見えない、それどころか体がピクリとも動かない。

 訊きたい事は色々あるが、口すらも動かせない。

「大丈夫だよ、例え口には出せてなくても、何を思ってるか分かるから…」

 …そうらしい。 それじゃ、ここはどこなんだ…?

「うーん、そうだね…深層意識の中?」

 …俺に訊かれても困る。 それに誰の深層意識だよ。

「いや、表現しにくくてさ、でもここは君の深層意識の中なんだよ、多分」

 多分って…ここは俺の中みたいなものなのか?

「ま、多分当たり」

 …それじゃ何で俺の中にお前がいるんだ?

「ん、ちょっと面白そうだったから侵入してみた」

 いや、面白そうって、それに侵入かよ…。

「いや、冗談だよ」

 …。

「まあ、面白そうだからって言ってもおかしくないけどね」

 …はぁ。

「だってそうでしょ? 人竜族かと思いきや本当はそうではない、それどころか…」

 …え? どういうことだ!!!

「わわ! そんなに強く念じないで…頭がくらくらするぅ…」

 あ、すまん…で、どう言うことなんだ? 人竜族じゃないって。

「うーん、言葉どおりの意味なんだけどね、戦闘の時に鱗が出るからてっきり人竜族だと思ってたんだけど…君も気付いてないの?」

 う、あ、まあな。

 正直リムには信じられない話しだったが、何故かこの言葉を聞いていると疑うことが出来なかった。

 なんだか信じ込ませるような…タロンの時と同じような浸透感。 それがこの言葉にはあった。

「へぇ…それじゃもう一つの事も…」

 もう一つの事?

「…うん」

 何か他にあるのか?

「…多分、この奥にある君の記憶の中に全てが眠ってるよ」

 俺の記憶の中に?

 少なくともリムの覚えている範囲の中では思い当たる事はなかった。

「この中には、君が生まれてから今まですべての記憶が圧縮されてあるんだ」

 …。

「これはどんな生き物でも言えるんだけど、自分の生まれてからの記憶なんて、覚えきれないでしょ? だから深層意識の中に蓄えておくんだ」

 そうなのか…。

「でも、自分の記憶として戻るんじゃなくて、その記憶をその近くで体験するみたいな感じなんだけど…」

 …それじゃ、あの事も…。

「…でも、余りに悲しい記憶とかがあって、それを思い出して凄い後悔した人とかもいるんだけど、それでも見てみる?」

 …ああ。

「ついでに、僕も付き添って良い?」

 …う…ま、良いか。

「よし! それじゃレッツゴー!」

 …嫌に明るいな…。

 というかどこに行くのであろうか? と切に思ってしまったリムであった。

to be continued…。




 後書き
 長らくお待たせしましたReason'sFang24話お届けしました〜♪
 なんというか…前半と後半が違いすぎるような気がします(汗 これもそれもノリがその日によって違うから…(ぇ
 とりあえず、これからも頑張りますので…(汗
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