誰もが無口で突き進む。

 だが、その心に秘めているものは細部や形は違えども、同じ物のような気がした。

 そして、数分歩いたところで明らかに今までと感じの違う扉が目の前に現われた。

「ここ、かな?」

「ああ、多分な」

 …この先に、『理の牙』が…。 そして、あんなことをした奴が…。

 リムはゆっくりと近づき、扉に手を触れ、押し開けた。

 扉が、大きな音を立てて、左右に割れた。

Reason's Fang23話
真実 1




 恐らく部屋の広さは今まで見てきた中で一番の大きさだろう。

 部屋の隅のほうに、機械とおぼしき物が配置されている。

 目の前の壁には、何やら白い枠に映像と思われるものが流されている。

 そして、その前に、男がいた。

 ぼろぼろな白いローブ風の服を纏った男性が、こちらに背を向けて立っていた。

「…クックックッ…素晴らしい…」

 男がこちらも見ずに話しかける。

「急激な身体能力の向上、内的超能力の爆発的進化…いや、封じていた能力の解放と言った方が正しいか」

「何を、言ってるんだ?」

 ウェルチとReason'sFangを引きぬきながらリムは訊いた。

「それに、人間の姿をしながら人間とはかけ離れた、神とも呼べるほどの力を持つ者達…」

 ドォォォン!!

 男が言い終わる前に男の横の方で爆発が起こる。

「…おやおや、最近の者には礼儀がなっとらんと見える…」

 男が振りかえる。 見た感じ、30代位の男性だろうか?

 その男が、爆発の魔法を繰り出したタロンのほうを向いて話しかける。

「全く、わしがせっかく話してやっとると言うのに」

「悪いな、こっちには興味なんか全くないからな」

 そう言いつつ弓を構えるタロン。

「ふぇふぇふぇ、もしここに『理の牙』があったとしてもか?」

「…やっぱりか」

 そう呟いたのはリム。

「まあ良いじゃろう、お前達は実験材料としては優秀そうじゃからの」

「実験、材料…?」

「今までの奴等とは比較にすらならないほどのな」

「やはり、貴方が…あんなことを!?」

 エルが思わず叫ぶ。 

「まあ、成功するとは思っておらんかったし、それにデータ収集の役ぐらいにしか立たないがな」

 それは暗に、エルの言葉を肯定していた。

「何…で!」

 エルの武器を握っている手が真っ白になっていた。

「何で? じゃと、お前達が魔法とやらを研究するのと同じじゃよ」

 男は誇らしげに語り始める。

「自分の好奇心を満たすため、自分を満足させるため、それ以外の事に何の価値がある?」

「その人達が、かわいそうだとは、思わないんですか!?」

「愚問じゃの」

 そう言ってからこちらを見渡す。 その目がアルメリアで止まる。

「ほう、お主…!」

「…!!」

 リムもその台詞には驚いて、アルメリアの方を見る。

 タロンが庇うかのようにアルメリアの前に出る。

「お主も、その女と同じか…興味深い」

 そう話すと同時に男が右手を振り上げる、同時に、光が迸る!!

「うわっ!」

 思わず目を瞑るリム。 すぐに光は収まった。

 とりあえず自分に以上はない、周囲を見ると…タロンとエルが倒れていた!

「タロンさん!」

 慌ててタロンを抱き上げるアルメリア。

「…! これは…」

「ふぇふぇ、女を庇ってもまだ生きているとは…真に興味深い」

「貴様!!」

 リムは飛び出し、ウェルチを振るう!

「風荒剣!」

 放たれた風の刃は、男の白衣を掠める!

「ふぇふぇ、やはりお前には効かぬか、それに…」

 そう言いかけてウィルの方を見る。

「お前も、じゃな」

 そして再びリムの方を見て言った。

「真に『理の牙』を受け継ぐもの、そして『理の牙』ようやくわしの元に…!」




「『理の牙』を、受け継ぐ?」

「そうじゃ…クリエル」

「クリエル?」

 その言葉は確かにリムに向かって放たれていた。 と!

 ガキィィィ!! と音が立った!

「何…?」

 突き出された拳を何とかよける男。 そしてその拳を突き出していたのは…。

「タロン!?」

 そう、先ほどまで倒れていたはずのタロンだった。

「…リム、なんだかいろいろあるみたいだがまずはコイツをどうにかするぞ!」

 と、こちらを見ずに話すタロン。

「ああ!」

 改めて双剣を構えなおすリム。

「おろかな…『理の牙』の力を見たいのか…?」

「使わせるか!」

 リムはウェルチを振り下ろす!

 それと同時に男が真っ白な剣を振り上げる!

 ガキィィィ! と音を立てて重なり合う! 

 リムはもう一方のReason'sFangで薙ぎ払う!

「くっ…」

 男はバックステップでそれをよける…と!

「貫掌!」

 タロンが詰め寄り拳を繰り出す!

「ぐはっ…!!」

 障壁のようなもので和らげられたようだが、それでも敵に打撃を与えていた!

「おのれ…!」

 言葉と同時に掌をこちらに向けて突き出す! 同時にリムとタロンに衝撃が走る!

「ぐっ!」

 吹き飛ばされるリムとタロン。

「おぬし等ごときに、負けるわしではないわぁ!!」

 と、同時に物凄いプレッシャーが襲いかかる!

 と、同時に何か黒いオーラのようなものが男から立ち上る!

 思わずひるみそうになるリム、だが。

「この程度、タロンの比じゃない!!」

 そう叫びながら体制を立て直す! タロンも再び構える!

「…行くぞ!」

to be continued…。




 後書き
 Reason'sFang23話お届けしました〜♪
 打つ時間がなかなか取れなくて少々あせってます(汗 ちょっと質も落ちてきてる気がするし…どうしましょう?(訊くな
 とりあえず頑張りますんでどうかよろしければ最後までお付き合いいただけるとありがたいです…。
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