とりあえずエルも完全に落ち着いた頃、部屋の一角に光の柱が立った。 「ん、ウィルか?」 そして出現したのは…倒れたままのウィル。 「ウィル!?」 外見は、特に傷はなさそうだが、どうしたのだろうかと慌てて駆け寄り、抱き上げて様子を見ようとしたリム。 「…すぅ…」 ウィルの寝息を聞いて、ゴン! と音が立つほどのヘッドバッドをウィルの額に食らわせてしまったリムであった。
許されざる事 「いた、いたたたた…」 額を押さえて転げまわっているリムとさほど痛くなさそうに起き上がるウィル。 「な、何? いきなり痛い…」 「だ、大丈夫ですか? リムさん、ウィルさん」 「…これはまた見事な…」 寝惚けているのか、言っていることが微妙に変なウィルに、まじめに心配するエルと呆れ半分賞賛半分の声で呟くタロン。 「うん、大丈夫」 「こっちは…あんまり大丈夫じゃない」 「…ったく、心配させんなよな…」 額を押さえながら愚痴を呟くリム。 「だって、眠かったから…」 「…寝るのはエルの専売特許だろ」 「はぅ、違います!」 全力で否定するエル。 だが、そんな反応をされるとそうだと肯定しているような気がするのは気のせいだろうか? 「とにかく…皆、大丈夫か?」 疲れたように訊いて来るタロン。 「ああ、どうってことない」 「はい、大丈夫です」 「まだ眠いけど…」 寝るな、と心の中で呟くリム。 「…はぁ…」 更に深いため息をつくタロンであった。 「それじゃあ、行きます? タロンさん」 「ああ、そうだな、行くか」 多分今度は何の罠も無いのだろうが、一応警戒して、罠をとく経験が豊富らしいタロンが先行していく。 …いや、何で罠を解きなれてるかなんてもう考えないことにした。 そして、注意しつつ先に進む一行。 と、少し進んだ先で、先ほどより大きな広間に出くわした。 そしてその前には…。 「ぅ…ぁ…」 そこには、生きたゾンビみたいな敵が5〜6体いた…。 「こ、これは…」 エルが顔面を蒼白にしながら呟く。 「これが、エルが言ってた…?」 リムがエルに問うと、青い表情のまま首を縦に振るエル。 「なんだ、これは? 傀儡系の術…か? でも、それでもこんなに同時に操ることなんて…」 呟くタロン。 「まさか、今までにここに来た人たちなんでしょうか…」 エルほどではないとはいえ、青ざめた表情で話すアルメリア。 「なんて…ことを」 珍しく怒りの表情をにじませて話すウィル。 「これは、術を解ければ直るんじゃ…」 「…違う」 意見を言おうとしたリムをさえぎるように切り出すタロン。 「生かされてるんだ、もし傀儡の効果が解ければ…彼等は死ぬ」 「そ、そんな…」 その場にへたり込むエル。 今のエルには耐えられないことかもしれない。 「エル、下がってるんだ」 そういってから一歩前へ出てウェルチとReason'sFangを引き抜くリム。 「リム、良いのか?」 そうリムに訊きながら格闘の構えを見せるタロン。 「ああ、もし俺だったらだけど…こんな状態になったら、死んだほうがましだと思うだろうからな」 「…リム、僕もそう思うよ」 後ろからウィルの声が聞こえてくる。 そして、鞭を取り出す音も。 「…私も、そう思います」 そしてアルメリアの声。 「…皆さん、どうして…?」 エルの声。 どうして…何がどうしてなのか、彼女にも分かっていないような気がするが…。 「例えその場で辛くても、後で後悔するような選択は絶対にしないって誓った、それだけだ」 タロンの声。 そしてそれはリムの意思でもあった。 もう、キュリ姉の時みたいに…逃げてはいられない! 「荒れ狂う風の暴君よ! 我が敵にその不条理な裁きをぶつけよ!」 「深遠たる闇にたゆとう欠片よ! その力もって、今我が敵に滅びを与えよ!」 タロンとアルメリアが詠唱を始める。 同時に飛び出すリムとウィル。 敵の一体も信じられないほどのスピードでリムに襲い掛かり、手に持った剣を振り下ろす! それをウェルチで受け止め、Reason'sFangに魔力を込めて切り払う! 敵の剣はまるで紙を切るかのように切り裂かれる! 「ゴッドブレス!」 「グラディエイション!」 と、タロンとアルメリアの詠唱が完成した! 「「合体魔法!! エターナルアーク!!!」」 タロンとアルメリアの声が重なる! と、同時に周囲一体が凍りつく!! それと同時に風が吹き荒れ、敵をつぶしていく! だが、魔法に対する耐性が高められていたのか全滅はできなかった。 だが残り2体!! リムはバックステップで距離をとると共に双剣に力を篭める! 「真空双牙!!」 放たれた二本の風の刃が敵を切り裂く! 「雷よ! 我が声に答えとどろけ!!」 と、ウィルの声が響き、同時に雷のほとばしる音が聞こえる。 ウィルも、敵を倒し、とりあえず全滅させた…と。 奥から新たな敵が現れる! 「ちっ…」 改めて武器を構えなおす。 と。 「戦う戦士たちに勝利の祝福を! パワーフィル!!」 身体に力が満ち溢れる。 それを掛けたのは…エル。 「まだ、あの人たちを倒すことはできません…」 自白するように呟くエル。 「でも! リムさんたちも失いたくはありません!」 はっきりと、意思のこもった声で。 「もし、リムさんたちが戦うというのならば…私も!」 リムは後ろを振り向く。 杖を持ち、まだ少し青いものの、確かな意思を持った表情のエルがいた。 「リムさんたちを手助けすることしかできませんが、私も、お手伝いします!」 それから、エルも加わった戦闘は楽だった。 エルの魔法の加護を受け、リムが突進し詠唱の時間を稼ぐ。 タロンの、アルメリアの、ウィルの魔法が敵を殲滅していく。 それを繰り返して、少し時間が掛かったものの、敵を全滅させた。 「ふぅ…」 ようやく増援が出てこなくなった事を確認して、武器を収めるリム。 「リムさん」 エルの声、珍しく怒気が混ざっている。 「私、こんな事をした人が…許せません」 「…俺もだ」 何かは知らないがおそらくこの奥にいるのだろう、この原因を作ったものが。 「…行くか」 そういい放ち、リムは前へ進む。 見えない何かに立ち向かうかのように…。 to be continued…。
後書き はい、Reason'sFang22話お届けしました〜♪ なんというか…ちょっと描写が荒いかなぁ…と思ってみたり…というかまだまだ未熟ですね(汗 もうちょっと頑張りたいけど…疲れた…(汗
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