「はぅ…ごめんなさい、リムさん」

 リムの胸の中でひとしきり泣いて、恥ずかしそうに顔を赤らめながらエルはそう呟いた。

「いや、いいよ」

 そう答えるリム。 …と。 先ほどエルが出てきた場所とは違う場所に、時間差で二箇所から光の柱が立ち上った。

 片方からタロン、片方からアルメリアが出てきた。

「タロン、それにアルメリア」

「よ、そっちも上手いことやったみたいだな」

「みたいですね。 …あれ? ウィル君は?」

「ん、まだだ、でもウィルなら大丈夫だろう」

 実際、ウィルはそう簡単にあきらめることもしないし、そこまで弱いわけでもない。

 何より、本人は頭が悪いといってるが、危機的状況での感の冴え渡りは結構なものだ。

「ですよね、大丈夫ですよね」

 まだちょっと赤い目をしたエルを見て、ウサギみたいだな…と思いながらリムはうなずいた。

Reason's Fang21話
秘められた罠 ウィル編




 ウィルは、夢を見ていた。

 それは、見知らぬ場所だった。 だが、雰囲気がこの望郷の社に似ているような気がした。

 子供が、母親らしき女性に抱かれて安心しきった表情で眠っている。

 その母親も、慈しむような表情で子供を見ている。

 だが、それは自分の記憶にすらない。 それどころか、その子供は自分ですらないような気がする。




「う…ん?」

 ウィルはふと目を覚ました。

「変な夢を見たなぁ…」

 のんびりと呟く。 でも、全く記憶にないどころか自分すら出ていなかった。

 それに、夢で出てきていた少年…。 あれは…どこかで見たことがあるような気がして。

「…」

 なぜ、自分の過去じゃない夢を見たのだろうか。 そして、なぜそれを今見たのか。

 自分のなくなった記憶、そこには、一体何があったのだろうか…。




「…それよりも、何で一人だっけ?」

 ウィルはボケていた。

 えっと、確か…奥に行こうとして、突然光って…、それでここに来たのかな?

 と、その時、突然風が吹き荒れた!

「!」

 鞭を取りだし構えるウィル。

「一人で戦うの、久しぶりだね…」

 そう呟くと同時に、目の前に敵が姿を現す!!

「…何? コレ…」

 何と言うか…見ただけだとまるで布きれが風で舞い上げられているような感じだった。

 だが、リムは敵対の意思をそこからはっきりと感じていた。

「どうやって、戦うの?」

 ちょっと疑問だった。 とりあえずウィルは詠唱を始めた。

「大気に宿りし怒りの力よ、今、我の意思に従いて敵を討て! ライトニング!!」

 ウィルが詠唱を終えると同時に雷が布キレに集まる! そして布キレが燃え尽きて…。

 そして布キレが燃え尽きてなくなれば当然…。

「あ、しまった…」

 相手を補足する手段を失ってしまったウィルであった。

「…見えない相手にどうしろっての?」

 自業自得に近いとはいえ、珍しく困り果てたウィルであった…。




 敵の突進と思われる攻撃を、殺気を感ずることによって何とか紙一重でよけまくり、何とか反撃を試みるが、結局当たらず…と繰り返していた。

「これじゃきりがないね…」

 珍しくちょっとあせったように呟くウィル。

 せめて相手の姿が見えれば…と思う。

「…いちかばちか、やってみる…かな」

 ウィルはそう呟くと、詠唱を開始する!

「大気に宿りし穢れた者達よ、今、我の周りに集え! ポイズンウィンド!!」

 詠唱が終ると同時に大きく息を吸い込むウィル。 同時にウィルの周囲に紫色の薄い煙が立ち込める!

 周囲を必死に見開くウィル。 と、そこに煙が不自然に避けていく場所があった!

 ウィルは躊躇わずにそこに思いっきり鞭を振り下ろす!

 シュ…パシィィィ!! と大きな音を立てて見えない何かとぶつかる! そして鞭で巻き取り動きを封じる!

 同時に心に強く念じるウィル! と、その刹那!

 バシバシバシィ!!! と大きな音を立てて鞭が、そして敵が帯電する!!

 そしてその瞬間、敵の気配が消え去った事を悟った。




 ウィルはもう一度強く念じた。 すると周りを立ち込めていた煙が霧散する。

「ぷはぁ!! ぜぃ…ぜぃ…ふぅ…」

 それと同時に大きく息を吸い込むウィル。

 全く…なれない事はするもんじゃないね…そう心に思いながらウィルは意識を薄れさしていった…。

to be continued…。




 後書き(02/10/21)
 やった、今日中にアップ完了(ぇ それはともかくReason'sFang21話をお送りしました〜♪
 とりあえずタロンとアルメリアの個人戦はパスということで(汗
 さて、次回から更に奥へ、何をリムたちが待っているのでしょうか?
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