ゴゴゴゴゴ…
「ん?」
順調に歩いていたリム達は、その音に足を止めた。
「この音は一体…」
エルがそう呟く。
「さあ、なんだか…地響きみたいだが」
「それにしてはなんだか様子が変だな」
リムが答え、タロンが付け加える。
そして、その音がだんだん大きくなってくる。
「…?」
ふと、前方を見ていたウィルが何かに気付く。
「あれ…は?」
ウィルが指差した前方に、何やら小さな雪の玉のようなものが見えた。
「…まさか」
リムが呟く。
ゴゴゴゴゴ…。
地響きのような音が大きくなると同等に雪の玉のようなものも大きくなる。
そして…気付いた時には大きな雪の玉となってリム達の方に転がってきた!
「うわ!」
慌てて全員横に飛び退く。 その雪の玉は周りの雪を巻き込みつつ転がっていった。
「…なんだったんだ?」
その問に答えれるものは居なかった。
Reason's Fang9話
リムウェル=キュリアス1
だが、地響きはそれで収まらなかった。
「これで雪崩とか起きたらいやだね…」
しみじみといった風に言うウィル。
「雪崩は、山だけで良いですよ…」
何故か苦い表情をしてそう言うアルメリア。 タロンも苦笑しつつ同意している。
そして、また再び地響きが大きくなる。 それも後ろのほうから聞こえてくるような気がする。
「…なあ」
後ろを向きながら語り掛けるリム、全員が後ろを向いて、固まる。
「…なんで、転がっていった雪玉の転がる方向が反転してるんだ?」
「…それに、何で数が増えてるんでしょうか…」
リムが疑問を呟き、エルがさらに疑問を呟く。
何故かリム達の後ろには先ほど転がっていった雪の玉が、それも3つに増えてそこにあった。
「…それに、何でその雪玉に囲まれてるのでしょうか、私達」
そして、アルメリアがさらに呟く。
気がついたら、リム達は雪玉3つに囲まれている形で立っていた。 と。
ウイイィィ…。
急にそんな聞き覚えの無い音が辺りに響いた。 音の発生源は雪の玉のようだ。
しかも、その音がだんだん高く大きくなっていく。 そして…!
ピシィィ!! そんな音を立てて雪の玉に亀裂が走り、強烈な光が漏れ出す!
「うわぁ!」
目も空けていられないほどの光に、リムは目を瞑る。 そして、光が収まり、おずおずと目を空けてみる。
「…な!」
そこには既に雪の玉は無く、雪の玉の変わりに、ガラスとクリスタルを合わせたような物で作られた杖を持った像が出現していた!
慌てて武器を取り出すリム達、同時に、像の内1体が杖を振り上げる!
急に風が吹き荒れ、リム達を襲う!!
「うぁ…ッ!」
風に吹き飛ばされないように耐えるリム、すぐに風が収まり、膝をつくリム。
「…はぅ、力、が…」
振り向くリム、そこには、エルが倒れていた!
「エル! …なッ!?」
リムは慌てて立ちあがり、駆け寄ろうとするが足に雪が纏わりつき、上手く動けない。
…違う、雪が変わったんじゃない、力が…入らない!
慌ててリムが振り返ると、ウィルも似たような状態のようだ、そして、アルメリアも倒れていた。
「…ッ! この…程度!!」
その時、タロンの叫び声が聞こえた。 タロンの方を振り返ると、タロンの体を淡い光が包みこんでいた。
…魔力…か? リムはそう思った。 なんとなくだが。
「アルメリア!」
そしてアルメリアに駆け寄るタロン。
「…っ…この、程度で」
体に力を溜めるリム。
「俺を、嘗めるな!!!」
そして、気合を入れて叫ぶ、それがスイッチになったように体が思うように動き始める。
そしてリムが振り返るとエルに像が襲いかかろうとしていた!
「危ない!!」
リムはエルと像の間に割り込み、短剣で像の攻撃をいなした。
「っ…重い…」
リムはバランスを崩しかけたが、何とか体勢を立て直し、像を睨み付けた!
リムが像の攻撃をいなした時、タロンもアルメリアを庇いつつ像と対峙していた。
タロンは剣ではなく、弓を取り出していた。 弓の弦を引く、同時に右手の赤い指輪が輝き出し、矢を生み出す!
「轟天!」
タロンは風を纏った光の矢を放つ! 高速で飛ぶ矢は像の腕に掠り、少し打ち砕いた!!
「機械人形…やっぱり超科学か? でも、ここまで高等な技術の物は無かったはず…」
タロンは誰に言うわけでもなくそう呟いた。
敵が拳を繰り出してくる! タロンはそれを避け、弓を捨てて像に肉薄する! タロンの腕は淡い光に包まれている!
「はあっ!」
気合と共に拳を繰り出すタロン。 普通なら拳の方が砕けそうだが、その拳は像の足を打ち砕いた! それと同時にタロンは空高く跳躍する!!
「トレリア流…落鳳!」
タロンはそう叫び、蹴りを繰り出した! 空中から体重をかけて繰り出される蹴りが像の頭を打ち砕く!!
だが、それでも像は腕を振り回して攻撃してきた!
「ちっ、やっぱりだめか…」
タロンは吐き捨てるようにそう呟いた。
タロンがそうしている頃、リムは苦戦していた。
「っせい!」
リムの短剣が像に当たる! だが、対した傷はつけれなかった。
「くっ…」
リムには決定的な一撃が放てなかった。 エルを護りながら戦っているためだ。
像の固さとリム自体の疲れもそれの要因になっていた。
「リム! 危ない!」
ウィルの声が掛かる、だが、リムは反応することが出来なかった。
もう一体居た象の攻撃がリムに当たり、リムは弾き飛ばされて雪の上を転がった。
「ぐ…っ」
リムは沈みかける意識の中で心の奥から沸きあがるものを感じていた。
ソロソロ、チカラヲトキハナッテハドウダ? ノロワレシチカラヲ…。
ふざけるな…誰が…。
ダガ、コノママデハオマエハシヌゾ?
くっ…。
ニクメ、ナゲケ、カナシメ、ノロエ、ウラメ! ソレコソガチカラヲカイホウスルカギダ!
…うぁ…!
ニクメ!ナゲケ!カナシメ!ノロエ!ウラメ!ニクメ!ナゲケ!カナシメ!ノロエ!ウラメ!ニクメ!!ナゲケ!!カナシメ!!ノロエ!!ウラメ!!ニクメ!!ナゲケ!!カナシメ!!ノロエ!!ウラメ!!…ソシテ、カイホウシロ!!!!!!
うあ…うわぁぁぁ!!!!!!
to be continued…。
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2003/05/15 Vol1.00 公開