「『理の牙』を…一緒に?」



「ああ、『理の牙』を一緒にだ」



Reason's Fang4話
協力














 リムは一瞬何を言っているのか分からなかった。 全く想像していなかった言葉が帰ってきた。



「本気か?」



「ん? 本気だぞ」



「…でも」



 恐る恐る、と言った感じでエルが話しに入ってくる。



「…『理の牙』を…取り合いになりませんか?」



「ああ、その事か」



 タロンは納得したかのように呟いた。



「うーん、そうだなぁ…その時考えるさ」



「は?」



「もしこれで嫌なら時の凍る高原まででも良いから」



「…」



 リムは悩んでいた、相手の真意が読めない。 相手がまさかパーティを組みたいというとは思わなかったからだ。



 しかも『理の牙』をどうするか、手に入れたその時に考えると言う。



 …タロンは『理の牙』を手に入れるのが目的じゃないのか? いや、そうじゃなきゃこの土地まで来るのはおかしい、それとも…洞窟自体に用があるのか?



 今までの話しからしても最後の最後でだまし討ちと言う可能性が消えたわけではないがそれだけは無いとリムは思っていた。 あれだけの魔力を誰にも感知されずに展開したのだ、いくらコツがあるといっても相当の能力が有り、場数を踏んでいるには違いない。



 しかし、それだと色々な矛盾が出てくるのだ。 どうしても相手にとってパーティを組むだけの利益があるとは思えない。



「リム?」



「リムさん?」



「なあ、二人とも、どう思う? パーティを組むべきか組まないべきか」



 話しかけてきたウィルとエルにリムは質問を返した



「僕は…一緒に行っても良いと思う」



「私は…分かりません、でも、悪い人ではないと思います」



「…タロン」



「? なんだ?」



 リムは賭けに出る事にした。



「俺等に…隠してる事があるだろ?」



「! リムさん、何を…」



「ああ、ある」



「え!?」



 突然のリムの一言と、それを返すタロンの一言でエルは完全に混乱していた。



「なるほど…それじゃ良いか」



「え? え? え?」



「良いと言うと?」



「パーティ、組もうじゃないか」



「…分かった」



「え? えぇ? ええぇ!?」



 こうしてリム達のパーティにタロンとアルメリアが参加する事になるのだった。 …約一名、分かっていない人物はいたが。















「で…」



 結局あの後お互いに部屋に戻って支度をして、食堂で合流することになった。



 そして、リムが支度を終えて食堂についたときにはもう既にタロンの姿があった。



 そして同じテーブルの席に座り、仲間を待っていた時にタロンが話しかけてきた。



「隠し事、話さなくて良いのか?」



「ん、いいぞ、別に」



 タロンはその返答をわかっていたようで、特に反応を示さなかった。



「なら、何であんな事を聞いたんだ?」



 その問いの返答もタロンは分かっているような気がした。



「…賭け、かな?」



「賭け?」



「ああ、あそこであると言うなら信じる、ないと言うなら信じない、そう賭けていただけだ」



「ふーん」



 その答えで納得したようだ。タロンはリムから視線を外した。



「タロンさん、お待たせ〜♪」



 いかにも嬉しそうな声を発しながらアルメリアは駆け寄ってきた…と言うより思いっきりタロンに抱きついた。



「リム、準備できたよ〜」



「私も出来ました」



 続いてウィルが、最後にエルが登場する。



「さて、それじゃ行くか?」



 タロンがリムに問いかける。



「何で俺に?」



「一応この中じゃお前がリーダーなんだろ?」



「…そう、なのか?」



 エルとウィルに聞いてみる。



「そうじゃないの〜?」



「私もそう思います」



「と言う訳でリム君に決定ね」



 …なんだか、嫌な予感がする。 ふと、そう思ったリムであった。



「…一応、用意してからな」















「うぅ、寒ぃ…」



 一応防寒用のマントを羽織っているが、辺り一面雪で、やっぱりすごい寒かった。



「私も…さむいですぅ…」



「寝るなよ、エル」



「はぅ…」



「大丈夫か? エル、それにリム」



 見慣れない緑色のマントを羽織ったタロンが聞いてくる。



「…というか何でそんなに平気なんだ、タロン…それにウィル」



 なんとなく涼しい顔をしている二人に殺意を抱くリム。



「ああ、これは特製のマントだからな、それにこれが…」



「…で、そこ! いつまでいちゃいちゃしてる!」



 そしてさっきからタロンに引っ付いているアルメリアに怒鳴るリム。



「だって…寒いから」



「嘘付け、そのマント俺のマントと同じ材質で出来ている…と言うかこのマントと同じ物だろ」



 タロンが咄嗟に突っ込む、だが、引き剥がそうとはしない。 ちなみにアルメリアの羽織っているマントは、タロンのマントの色違いのようだ。



「…はずっ」



「…もう慣れた」



 思わず呟くリム、それに同調するように呟くタロン。



「因みに僕は…」



「反応遅いぞ、ウィル」



 もうなんか色々と無茶苦茶である。



「で、アイテムとか仕入れるんだよな?」



 急に真剣モードに切り替わったタロン。



「ああ」



「だったらちょっと知り合いがやっている店があるんだが、そこで仕入れないか?」



「ん〜、分かった、行くか」



「…一応寒いんだけど」



 だが、ウィルの呟きは誰にも届かなかった。















「いらっしゃ〜い!!」



 店の中に入ったとたん、元気な声と暖かな空気がリム達を迎えた。



「あ、タロンお兄ちゃん!」



「よう、元気だったか? フェリ」



「お久しぶり、フェリちゃん」



「アルメリアお姉ちゃんも!」



 元気いっぱいと言った感じの20くらいの女性だ。



「? こちらの人達は?」



「ああ、紹介する、今日からしばらく一緒に行動することになったリム、ウィル、エルだ」



「リムウェルだ、リムで良い、よろしく」



「ウィリアムです、ウィルで良いよ、よろしく〜」



「…エル、です」



「よろしくね〜、私はフェリアだよ」



 …なんか話し方が年下の人に話し掛けているような感じになっている。



「一応言っておくけど、俺は18だぞ」



「…え? 嘘?」



「ほんと」



「そ、そうなの…でも私より年下よ」



「うぐ…」



「どうした、フェリア?」



 どうやら騒がしいのが奥まで伝わったようで、奥から店主らしい男性が現われた。



「あ、お父さん! タロンさんにアルメリアさんよ!」



「よう、ラクア」



「久しぶりです、ラクアさん」



「おお、タロンにアルメリアか? 久しぶりだな」



 タロンと20くらい離れた男性…タロンの親戚か何かか? リムがそう考えていたらさらに奥から女性が現われた。



 フェリに良く似た感じのする女性だ。 フェリの母親だろうか?



「ん? そっちの面子は?」



「ああ、紹介する、リムにウィルにエルだ」



「リムウェルだ、よろしく」



「ウィリアムです〜」



「…エル…」



 …エルが怖がってるな、無理も無いか。



「ほら、来い、エル」



「はぅ…」



 とりあえずエルを手近な所へ招き寄せる。



「あら、エルちゃんにリムって兄弟なの?」



「いや、違うぞ」



 …違うけど、似たようなものだけどな。



 俺とリムには竜と言う唯一の共通点があるし、それに…。



「で、どうしてこんな所に来たんだ? 色々忙しいんだろ?」



「ああ、ちょっと『理の牙』をな…」



「ええ! タロンお兄ちゃん、『理の牙』を探しに行くの!?」



「…ああ」



「だめだよ! やめたほうが良いよ、タロンお兄ちゃん! 今まで誰も帰ってきた事が無いんだよ!」



「フェリア、大丈夫だ」



「お父さん!」



「フェリア、タロンさんとアルメリアさん、強いでしょ? 大丈夫よ」



 今まで会話に参加していなかった女性が優しくフェリに語り掛ける。



「だけど、だけど」



「フェリ」



「お兄ちゃん…」



「大丈夫だ、絶対に帰ってくるから」



「約束…だよ?」



「ああ、約束だ。 …そうだ、これを」



 そう言ってタロンはフェリに何かを渡した。



「これは? …タロンお兄ちゃんの大切な…!」



「絶対取りに戻ってくるから預かっておいてくれないか?」



「…うん、分かったよ…」



 まだしぶしぶと言った感はあるが、フェリも分かっているのかおとなしく預かった。



「いいなぁ…フェリちゃん」



「…なに言ってるの、アルメリアお姉ちゃん、タロンお兄ちゃん持っていったの、アルメリアお姉ちゃんじゃない」



「そうなんだけど…ね?」



 …ってチョットマテオイ!



「どう言う意味…だ?」



 思わず問いかけるリム



「でも、あれは私がもらわれたって言った方が正しいと思うんだけど…」



「でも、でも…それでもうらやましいよ」



 その問も普通に無視された。 いや、だから待て、おい!



「タロン…」



「気にするな、いつもの事だ」



「いや、じゃなくて…俺が聞きたいのは今の会話はどう言う意味かなって…」



「? そのままの意味だが、俺とアルメリアが結婚してるって」



 …何?



「タロン…」



「?」



「良いのか? そんな立場の人をあんな所に連れてって…」



「アルメリアは俺から離れるほうを怖がるぞ」



「…そんなものか?」



「いや、アルメリアが特殊なんだ」



 それから何故か女性陣の会話が盛り上がり、結局目当てのものを買い揃えるのに2時間を要した。



 まあ、格安で手に入ったのは凄い有り難いが…。 疲れるぞ…。



to be continued…。





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 後書き




2003/05/15 Vol1.00 公開