「…だけど…」



「とりあえず」



 言いかけたリムの言葉はタロンの言葉にさえぎられた。



「君達が竜族だって事は誰にも言わない、それにちょっと細工して竜とかその関係の言葉だけ外に漏れないようにしてある」



「…そんなこと」



「…確かに、今なら強い魔力を感じるけど、いつの間に…」



「………!!」



 ウィルに言われるまでぜんぜん気づかなかった、この位の魔力なら集中していなくても感じる事は出来るはず、それなのにこの部屋にはいつの間にか魔力が満ちていた。



「…信じられません…」



 エルも気づいていなかったようだ。



「なに、ちょっとしたコツがあるんだ」



 得意げに話すタロン。



「というか、そう言う話じゃないな、とりあえずさっきの話は信じてほしい」



Reason's Fang3話
真龍族と人竜族














「しかし…」



 話を元に戻すタロン、確かにその眼は嘘を言ってはいないような気もするが…油断が出来ない。



「私からも…タロンさんを信じていただけませんか?」



 それまで黙っていたアルメリアがリムに話し掛ける。



「…分かった」



 人によっては危険な賭けになるかもしれない、が彼等なら信じても良い。 リムはそう思った。



「いいよな? ウィル、エル」



「うん、僕も良いよ」



「私も、いいと思います」



「ただ、これで話が全て終わったわけじゃないんだろ?」



 リムは抜いていた短剣を仕舞いながら言った。



「ああ、まあな」



「あの、タロンさん?」



「ん?」



「その、白竜族って、何なんですか?」



 アルメリアのその台詞を聞いて、その場にいる全員が脱力した。



「…アルメリア、お前、知らなかったのか…」



「はい、あ、それに人竜族ってのも…」



「…頼むぞ、おい」



 頭を抱えるタロン。



「本人達から聞くのが一番手っ取り早いと思うぞ」



 そう結論付けられた。



「あ、それじゃエルさん、教えてください」



「…え? 私、ですか?」



「少なくともお前以外にこの場にエルと言う名の人物はいないぞ」



「いや、そう言う意味じゃなくて…いいんでしょうか?」



「いいんじゃないか? エルが説明しなくてもタロンが説明するだけだから」



「あ、はい、それじゃあ…」



 とりあえずエルがアルメリアの前に立った。















「今の私は、人間の姿をしているんですけど、本当はドラゴンなんです」



「へ〜、そうなんだ」



 アルメリアは特に驚く様子も無く、エルの頭とリボンを撫でる。



 エルはちょっとまだ怯えた様子だが、大丈夫だろう。



「私の本当の種族名はさっきタロンさんが言ったように白竜族なんです」



「その、白龍族…って何?」



「あ、その前に」



 リムが会話の間に入る。



「竜にも大きく分けると二種類になるんだ、竜と人が混ざったようなタイプは人竜族、御伽噺なんかに出てくるような獣のタイプを真龍族って呼ぶんだ」



「人竜族に真龍族…」



「で、エルは真龍族の方になる、俺は人竜族だ」



「え? でも見た目は人間と変わりませんが…」



「それは後から話す。 エル、悪かったな、話の間に入って」



 そう言ってリムはエルの頭を少し乱暴に撫でた、エルは少し困った表情を浮かべながらも、撫でられ続けていた。



「それじゃ話しに戻りますね、さっきリムさんが言ったように、私は真龍族に分類されるんですが、その真龍族の中にも大まかに3つの分類があるんです」



「ふむふむ」



「どちらかと言うと魔…と言うよりは地界に近い黒龍族、中立の立場にいる龍族、そして神や天と言ったほうに近い私達白龍族…大まかに分けてこの3つですね」



「つまり、エルちゃんは天に近い真龍族なのね、そして今は人間の姿に変身していると」



「はい、まあ、こんな所…ですね」















「それじゃ次は俺か?」



 エルが話し終えたようなので、リムが再び話に入る。



「ええ、それじゃよろしくね、リムちゃん」



 今の最後の一言に思わずこけかけるリム。



「リムちゃん…って、リムで良いって言ったと思うが」



「うーん、残念」



「残念…って」



 なんだかペースが微妙に狂うな…とリムは思った。



「ええっと、それじゃリム君でいい?」



「…まあ、いい」



「で、リム君は人竜だって言ったけど」



「ああ、念のため言っておくが俺は変身する事は出来ないぞ」



「でも私には人間に見えるんだけど」



「まあ、それは種族の特徴があるからな」



「種族の特徴? それって人間に近いか龍に近いかってこと?」



「平たく言えばそういうことだ、俺の種族は人に近いんだが…」



「だが?」



「極度の緊張状態…そうだな、例えば臨戦体制とかに入ると腕とか体に鱗が浮き上がるんだ」



「え? そうなの? でもさっきは気づかなかったけど」



「それは多分タロンに敵対意識が無かったから出てこなかったんだと思う」



 この辺は遺伝子レベルの話で、意識してやっていることではない。 だからリム自身にも良く分からないのだ。



「ふ〜ん、そうなんだ…」



「まあ、こんなところかな」



「ええ、ありがとうリム君、エルちゃん」















「で、本題に戻って良いか?」



 休憩して調子を取り戻したらしいタロンが聞いてくる。



「ああ」



 エルもウィルもリムもタロンの方に向きかえる。



「で、俺達がお前達に話しかけたのは…一緒に『理の牙』を探さないかと思ってな」



to be continued…。





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 後書き




2003/05/15 Vol1.00 公開