必要エネルギー量と食べる量



今回は食べる量を具体的に書きますが、運動により体力を維持・向上させようとする方を対象
としています。 減量しなくてはならない方については、別の機会に書きたいと思います。

また、栄養学的に厳密に計算すると、計算の煩雑さもさることながら、一般の人には実行不可能
なものになってしまいますので、ざっくり・おおまかに見ていくことにします。

ご飯は1日に茶碗5杯
先回、「ご飯をしっかり食べよう」と書きましたが、「しかっり」とはどのくらいか?
というのが今回の第1テーマです。

まず、1日に必要な糖質の量は次のように求めます。
   1日に必要な糖質の量(g)=1日に必要なエネルギー量(Kcal)×0.6÷4

   <参考> この計算式は下記の2つの理由に基づきます。
           (1)エネルギーの60%は糖質から摂取するのが栄養学の基本である。
           (2)糖質のエネルギー量は 4Kcal/g である。

仮に1日に必要なエネルギー量を2000Kcalとすると
   2000(Kcal)×0.6÷4=300(g) となります。
茶碗1杯のご飯(130g)に含まれる糖質は約41gですので、糖質をご飯だけで摂ろうとすると、
   300g÷41g=7.3
となり、7.3杯ということになります。

しかし、糖質を含む食べ物はご飯以外にも色々あります。たとえば、朝牛乳1杯、おやつや
デザートにバナナ1本、みかん1個食べたとすると、糖質の量はご飯1杯分に相当します。
また、一般に、イモ類や果物・缶入り飲料には糖質が豊富に含まれていますし、料理の調味料
として砂糖が使われていることもありますので、おかずやおやつから摂取する糖質は
少なくありません。

そこで、ざっくりいうと 「ご飯は茶碗に5杯」 くらいになります。

なお、ご飯をパン(4枚切り食パン1枚)、うどんに置き換えることもできます。

しかし、第6次改定日本人の栄養所要量を見ても分かるとおり、適度な運動をする場合、
最も所要量が低い60代女性においてもその所要量は1900Kcalと言われており、実際には
かなりの人がもっとたくさん食べることが必要です。

では、あなたの1日あたりのエネルギー所要量は?
1日あたりのエネルギー所要量を求める主な方法は3つあります。

 1.年齢・身長と運動による消費エネルギーから求める
    年齢は代謝量、身長は体格を代表していますので、妥当性のある方法と思われます。

 2.体重と運動・生活活動強度から求める
    痩せすぎの人、太りすぎの人にその傾向を助長する誤解が生じる可能性があります。

 3.第6次日本人の栄養所要量から求める
    年齢・性・生活活動強度別に、ほとんどの人が必要量を満たす所要量であり、
    平均より体格の小さい人には過剰傾向になります。

したがって、個人別のエネルギー所要量としては、1.の方法が良いと思われます。
まず、年齢・身長に依存する消費エネルギーの計算式を下表に示します。
さあ、電卓を持ってきて計算してみましょう。

1日のエネルギー所要量 Kcal (Hは身長cm)
年齢 男性 女性
20代 22.74H−1327 17.33H− 679
30代 20.83H−1033 17.67H− 793
40代 20.83H−1083 17.67H− 793
50代 22.86H−1479 18.83H−1002
60台 21.43H−1427 18.50H−1051

次に、運動による消費エネルギーを計算します。
おもな種目によるエネルギー消費量を下表に紹介します。
なお、定期的に運動をしている方は、1週間の必要エネルギーを平均化してください。
これは、特に、激しい運動をされている方ほど、トレーニング内容により日々のエネルギー
摂取量が極端に変わってしまうのを防ぐためです。

エネルギー消費量 Kcal/体重(Kg)/分
主な運動・レジャー種目 男性 女性
ウォーキング 0.082 0.076
ジョギング(120m/分) 0.126 0.117
サイクリング(16Km/h) 0.117
エアロビックダンス 0.091 0.084
ゴルフ(電動カート) 0.042
テニス 0.126 0.117
水泳(平泳ぎで軽く流す) 0.197 0.182
筋力トレ−ニング 0.190 0.175

<計算例>
  身長165cm、体重70Kgの40代男性 週3回1時間のウェイトトレーニングを行う場合

  (A) : 1日のエネルギー所要量 = 20.83 × 165cm − 1083 = 2354 Kcal

  (B) : トレーニングでのエネルギー消費量 = 0.190 × 70Kg × 20分 = 266Kcal
     (トレーニング1時間中、40分はセット間インターバルおよびウェイトの付替え等と仮定)

   1週間のエネルギー所要量の1日平均 = ( (A) × 7日 + (B) × 3回 ) ÷ 7日
        ( 2354 Kcal × 7日 + 266 Kca l× 3回 ) ÷ 7日 = 2468 Kcal

  先に述べたように、エネルギー所要量が2000Kcalの時、必要なご飯は茶碗5杯ですので、
2468Kcal÷2000Kal×5杯=約6杯
  となり、一日に必要なご飯量は茶碗6杯分となります。

これで、あなたもあなたに必要なご飯の量を計算できますね?

肉や魚の必要量もチェックしてみよう!
肉や魚を食べる目的は、筋肉をつくるたん白質の摂取です。
たん白質の所要量は、標準的には体重1Kgあたり1.2gと言われています。
健康のため運動を継続している方は1.4〜1.6g/Kgを目安としてください。
なお、激しいトレーニングする方は、2.0g/Kg必要です。

それでは、先ほどのケースで、たん白食品をどのくらい摂ればいいか、考えてみましょう。
<実施例>
  定期的に運動をしているので、たん白質の必要量は1.5g/kgとします。
  体重70Kg×1.5=105g

なお、食品に含まれるたん白質の量は、ざっくり言って、肉や魚100gにつき20gです。
ということは、1日に500gもの肉や魚を必要としてることになり、大食漢でもなければ無理
に思われます。しかし、牛乳や鶏卵等他の食品との組合せでトータルに考えてみましょう。

かなり大雑把な目安ですが、下表に、食材に含まれる糖質、たん白質と脂肪の量を示します。
肉や魚は種類によって脂肪の量がかなり違いますが、下表ではあまり多くない物を選びました。
ただし、ばら肉はたん白質よりも脂肪の割合が多くなりますので注意して下さい。
逆に、鶏肉のささ身やもも(皮なし)は脂肪の量がかなり低くなります。

食品名 1食あたりの摂取の目安 糖質の量 たん白質の量 脂肪の量
100g 0g 20g 10g
100g 0g 20g 10g
豆類(豆腐を含む) 豆腐なら1/2丁 2g 10g 7g
いも類 じゃがいも100g 17g 2g 0g
牛乳 200g 10g 6g 7g
鶏卵 1個 0g 6g 6g
食パン 4枚切り1枚 44g 7g 4g
ご飯 茶碗1杯(130g) 41g 3g 1g

では、先ほどのケースで、総合的に考えて各食品をどのくらい摂ればいいか、考えてみましょう。
<実施例>
  1.糖質はご飯6杯分を織り込みました。
  2.昼食と夕食に調味料等として糖質を各10g加えました。
  3.調理は煮たり焼いたりを前提としていますので、炒めたり揚げたりすると脂肪の摂取量は
    もっと増えます。
    もし、炒めたり揚げたりするなら、肉や魚は脂肪の少ないものを選んだり、牛乳は低脂肪
    にしたりする工夫が必要です。
  4.この例は、エネルギー所要量確保を基準に考えていますので、実際のメニューには、
    ビタミンやミネラル確保のため、緑黄色野菜・海藻類・きのこ類 等を適度にアレンジする
    ことを忘れないでください。

下表を見ると、ご飯の量がかなり多いように思えるかもしれませんが、総エネルギーに対する
糖質の割合から判断すると、これくらい食べる必要があります。
ただし、ご飯は盛りによって重量がかなり違いますので注意してください。ここでは、1杯130g
としていますが、少なめに見えるはずです。
むしろ、実生活では脂肪でのエネルギー摂取比率が高くなりがちで、総カロリーを引き上げて
いるのではないでしょうか? 炒め物・揚げ物に加え、マヨネーズやドレッシングも要注意です。

タイミング 食        品 糖質 たん白質 脂肪
朝食 食パン1枚(ジャム)+鶏卵2個+牛乳1杯+みかん1個 76g 25g 23g
昼食 ご飯2杯+肉料理(材料100g)+豆腐1/4丁 92g 31g 16g
間食 おにぎり1個+牛乳1杯 51g 9g 8g
運動中 スポーツ飲料1缶 15g 0g 0g
夕食 ご飯2杯+魚料理(材料100g)+いも類のおかず 109g 33g 16g
寝る前 牛乳1杯 10g 6g 7g
合     計 353 104g 70g
結果の
検証
実施例の合計 : 2458Kcal (目標値 : 2468Kcal) 1412Kcal 416Kcal 630Kcal
実施例のエネルギー配分 57.4% 16.9% 25.6%
目標とするエネルギー配分 60.0% 15.0% 25.0%

この表の下段にもあるように糖質、たん白質、脂肪の摂取割合の基本は以下の通りです。

<エネルギー比> 糖質:たん白質:脂肪=60:15:25 

なお、エネルギー所要量が3000Kcalを超えるようなハードな運動をされる方は、たん白質や
脂肪でのエネルギー摂取割合を増やすことにより、必要量を確保していきます。

また、このような場合、たん白質の所要量は体重1Kgあたり2gに近づいていきますが、無駄な
脂肪の摂取量を抑えるためにも、プロテインパウダーを活用するのも一手です。

最後に、基礎的な数値として下記も覚えておいてください。
糖質:4Kcal/g  たん白質:4Kcal/g  脂肪:9Kcal/g

MIYAZAKI GYM